なぜ人は判断ミスを繰り返すのか?思考の落とし穴を整理する一冊|Think right(ロルフ・ドベリ)

企画・思考術

『Think right(シンク・ライト)』は、合理的に考えているつもりでも、なぜか同じ判断ミスを繰り返してしまう理由を、「思考の落とし穴」という形で整理してくれる一冊です。

この本が優れているのは、「正しい考え方」を教えるのではなく、判断がズレ始める地点に気づかせてくれるところにあります。

すべての選択を慎重に考える必要はありません。

ただし、失敗すると取り返しがつかない場面では、一度立ち止まって思考を点検する。

『Think right』は、そのための実用的な補助線として機能する本です。

目次

この本を一言でいうと

人は「ちゃんと考えた」と思っているときほど、無意識のクセで判断を誤る

本書は「正解」ではなく「間違え方(思考の落とし穴)」を体系化している

通読よりも「迷ったときに開く」使い方で最も力を発揮する

『Think right』は、頭をよくするための本ではなく、判断がズレ始める瞬間に気づくための本です。

「ちゃんと考えたはず」という思い込みをいったん外し、重要な決断の前に立ち止まる視点を与えてくれます。

迷ったときに開くことで、致命的な失敗を静かに減らしてくれる一冊です。

この本で解決できる悩み

重要な判断ほど、あとから後悔してしまう

転職、買い物、投資、仕事の方針。

「ちゃんと考えたはずなのに、なぜかうまくいかなかった」という経験がある人に、この本は向いています。

Think rightは、失敗を能力不足や性格の問題として片づけません。

誰もが同じように陥る思考のクセがあることを前提に、判断を冷静に振り返る視点を与えてくれます。

情報が多すぎて、決断に疲れている(決断疲れ)

比較記事、SNS、口コミ、専門家の意見。情報が増えるほど、決めること自体がストレスになる場面は少なくありません。

本書は「もっと調べよう」とは言いません。むしろ、情報が増えたときほど起こりやすい判断の歪みに気づかせてくれます。

投資・お金の判断を、感情でミスりたくない

「それっぽい話」や雰囲気に引っぱられて売買してしまう。確率やリスクを見ているつもりでも、後から振り返ると感情的だったと気づく。

Think rightは投資ノウハウ本ではありませんが、なぜ人が確率や統計を無視してしまうのかを理解することで、大きなミスを減らす助けになります。

仕事の意思決定に責任を感じている

経営判断、採用、外注、プロジェクトの方向性など、「失敗すると影響が大きい決断」を担っている人にも、この本は相性が良いです。

直感任せでも、完璧な論理主義でもない。

「ここぞ」という場面だけ、思考の精度を上げるという考え方は、実務にそのまま使えます。

認知バイアスを“実生活サイズ”で理解したい

心理学や行動経済学に興味はあるけれど、専門書は難しい。

Think rightは、買い物・仕事・人間関係など身近な場面と結びつけて説明されるため、知識で終わりません。

 



 

「思考の落とし穴」とは何か

思考の落とし穴とは、合理的に考えようとしたときに、一定のパターンで起きる推論の誤りです。

厄介なのは、本人が「ちゃんと考えた」と感じている状態でも発生すること。だからこそ本書は、知識を増やす前に、判断がズレ始める地点を可視化します。

代表的な「思考の落とし穴」7選

1. 確証のワナ

自分の考えに合う情報ばかり集め、反対の証拠を見落とす。

2. 生き残りのワナ

成功例だけを見て、「自分もいける」と思ってしまう。

3. フレーミングのワナ

同じ内容でも、言い方が違うだけで評価が変わる。

4. アンカリングのワナ

最初に見た数字や相場が、その後の判断を固定する。

5. 回想のワナ

結果を知ったあと、「最初から分かっていた」と感じてしまう。

6. 基準比率の無視

もっともらしい説明に引っぱられ、確率や統計を無視する。

7. 平均への回帰

たまたまの結果を、過大に評価してしまう。

 



 

決断前に使える:Think right式チェックリスト

迷ったときは、次の項目を一度だけ確認してみてください。

  • 反対の証拠を見たか
  • 成功例だけを見ていないか
  • 最初の数字に引っぱられていないか
  • 言い方で印象が変わっていないか
  • 確率や統計を無視していないか
  • 結果だけで判断を評価していないか

 



 

シーン別:仕事・お金・人生での使い方

仕事(意思決定・会議・評価)

最初の案や声の大きい意見に引っぱられがちな場面で、判断を整える。

投資・お金

ストーリーと確率を切り分け、大きなミスを防ぐ。

人生の選択

理由を後付けしていないか、自分の思考を点検する。

 



 

Thinkシリーズの違い・おすすめの読み順

  • 判断ミスを減らしたい → 『Think right』
  • 思考を明晰にしたい →『 Think clearly』
  • 意思決定を体系で学びたい → 『Think smart』

最初の一冊としては、『Think right』が最も実生活に直結します。

 



 

どう読むと役に立つか(読み方のコツ)

最初から順番に読まなくていい

『Think right』は、物語のように通読する本ではありません。各章は独立しており、どこから読んでも理解できる構成になっています。

まずは全体をざっと眺めて、今の自分に関係がありそうなテーマや、気になる見出しだけを拾い読みする方が、実用性を実感しやすくなります。

判断に迷っている「その瞬間」にこそ開く

この本が最も力を発揮するのは、何かを決める直前です。

仕事の方針、買い物、投資、誰かの提案に違和感を覚えたときなど、「もう少しで決断してしまいそうなタイミング」でページを開くことで、自分の思考がどこで歪み始めているかに気づきやすくなります。

読み終えてから使うのではなく、使いながら読む本だと考えると、役立ち方が変わります。

すべてを覚えようとしない

本書には多くの「思考の落とし穴」が登場しますが、それらを暗記する必要はありません。

重要なのは名称を覚えることではなく、「人はこういう場面で間違えやすい」という感覚を身につけることです。

一度読んでおけば、似た状況に出会ったときに自然と思い出せるようになります。

自分の失敗や後悔と結びつけて読む

紹介されている事例を、過去の自分の判断と照らし合わせながら読むと理解が深まります。

「あのとき迷ったのは、これが原因だったのか」と腑に落ちる体験が増えるほど、本書は単なる知識ではなく、実感を伴った道具になっていきます。

自分を責めるのではなく、構造として捉え直す姿勢が大切です。

重要な決断用に「自分専用のチェックポイント」を作る

読み進める中で、「これは自分がよくやるな」と感じた落とし穴だけを抜き出し、簡単なメモにまとめておくのがおすすめです。

重大な決断の前にそのメモを見返すだけで、思考にブレーキがかかります。本書は、チェックリストとして使うことで価値が最大化されます。

軽い判断まで深読みしすぎない

『Think right』は、すべての判断を慎重に考えることを勧めているわけではありません。

失敗しても取り返しのつく選択まで深く考えすぎると、かえって判断力が鈍ります。

本当に大切な場面だけ、思考の精度を上げる。このメリハリを意識することが、本書を上手に使うコツです。

 



 

読む前に知っておきたい注意点

即効性のあるノウハウ本ではない

読むだけで判断力が劇的に向上するような本ではありません。この本が与えてくれるのは「正解」ではなく、「立ち止まるための視点」です。実際の判断に使って初めて、その価値が実感できるタイプの一冊です。

思考のクセを完全に克服できるわけではない

本書で扱われる思考のクセは、人間である以上、完全に消せるものではありません。著者自身も、合理的に考え続けることは不可能だと前提にしています。目的はミスをゼロにすることではなく、重大な場面でのダメージを減らすことです。

派手さはなく、静かに効く本

成功談や断定的なメッセージで気分を高めるタイプの自己啓発書ではありません。語り口は落ち着いており、読み終えた直後に劇的な変化を感じることは少ないでしょう。その分、時間が経つほど「あのとき立ち止まれた」という形で効いてくる本です。

使って初めて価値がわかる

『Think right』は、読むこと自体よりも、判断の現場で使われてこそ意味を持ちます。迷ったときに開き、チェックし、決断する。その繰り返しの中で、少しずつ後悔が減っていきます。本棚に飾る本ではなく、判断のそばに置いておく本だと理解しておくと、期待を裏切られません。

 



 

まとめ|後悔を減らすための一冊

『Think right』は、「正しい考え方」や万能な思考法を身につけるための本ではありません。

むしろ、自分では気づきにくい判断のズレや、間違えやすい思考のクセに気づくための本です。

だからこそ、読後に劇的な変化を感じるよりも、時間をかけて静かに効いてきます。

私たちは、すべての選択を完璧に考え抜くことはできません。

失敗してもやり直せる判断まで慎重になりすぎると、決断そのものが重荷になってしまいます。

一方で、失敗すると大きな代償を伴う決断では、少し立ち止まって思考を点検するだけで、結果が大きく変わることもあります。

『Think right』が教えてくれるのは、その思考の使い分けの感覚です。

直感に任せていい場面と、冷静に見直すべき場面。その境目に気づけるようになることが、本書の最大の価値だといえるでしょう。

迷ったときにページを開き、「自分はいま、どの落とし穴に近づいているのか」を確認する。

そんな使い方を続けるうちに、派手な成功よりも、取り返しのつかない失敗が少しずつ減っていきます。

『Think right』は、読むほど賢くなる本ではありません。

後悔の量を、時間をかけて静かに減らしてくれる本として、判断に迷う場面のそばに置いておきたい一冊です。

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