〔新版〕取締役の心得|柳楽 仁史

会社設立・経営実務

目次

この本を一言でいうと・・・

取締役としての立場・責任を分かりやすく整理した入門書。

法的リスクやコンプライアンス義務など具体的に示し、危機管理の基本も解説。

「経営判断の原則」や「取締役会の運営」など、日本の会社法の枠組みに沿って理解できる。

 

『〔新版〕取締役の心得(柳楽 仁史)』は、取締役が担うべき法的責任やコンプライアンス上の注意点、取締役会の運営方法などを体系的に整理した入門書兼実務ガイドです。

近年の会社法やコーポレートガバナンス・コードの改正、投資家の監視強化などを背景に、取締役には幅広い職務範囲・責任が求められています。本書では、そうした最新の法制度やガバナンス要請に沿ったリスク管理や危機対応の基本を網羅的に解説し、具体的な実務対応策を示しています。

第1章では、取締役に課せられた善管注意義務・忠実義務・利益相反取引の制限などの法的基礎を分かりやすく整理しています。

第2章と第3章では、取締役会の意思決定プロセスとリスクマネジメントの観点から、情報提供のあり方や内部統制システムを機能させる方法を示しています。企業不祥事の際に問われる「管理責任」や「監督責任」の具体例も挙げられており、初動対応や専門家との連携について解説している点が特徴です。

続く第4章・第5章では、社外取締役・監査役との協働やD&O保険(取締役賠償責任保険)の活用など、ガバナンス強化と個人防衛策をバランスよく理解するための実務ポイントを提示しています。

第6章では、多様なステークホルダーへの配慮やESG・CSRへの取り組み、デジタルトランスフォーメーション(DX)など新たなリスク要因に向き合う姿勢と学習の重要性を強調しています。

総じて、本書は取締役として「会社全体の利益」を最優先に考え、法令順守と社会的責任を踏まえたうえで経営判断を行うための指針をわかりやすく示しています。

特に、取締役になる・なったばかりの読者や、ガバナンス強化を担う管理部門の担当者にとって、有用なチェックリストや事例が豊富に含まれた一冊です。

 

本書の位置づけと概要

取締役の責務
本書は、取締役が負う法的責任や実務上の注意点、取締役会の運営方法、コンプライアンスリスクへの対処など、企業統治(コーポレートガバナンス)の要点を理解するための入門書かつ実務ガイドとして位置づけられています。

改訂(新版)の背景
近年の会社法改正や金融商品取引法などの改正、コーポレートガバナンス・コードの導入、機関投資家のスチュワードシップ・コードなどを受けて、取締役に求められる職務範囲や責任が拡大傾向にあります。そうした背景を踏まえ、最新の法制度やガバナンス要件を盛り込みつつ、取締役としての実務上の対応策を整理しています。

 

本書の構成と主な内容

第1章:取締役の基本的役割と法的責任

取締役とは何か
  • 「会社を代表し、業務を執行する立場」である取締役の定義
  • 取締役と執行役、監査役などの違い・協働関係の整理
⠀取締役の任務と義務
  • 善管注意義務(会社法355条):取締役が、専門家としての能力・注意力をもって会社の利益のために行動すること
  • 忠実義務:法令・定款に基づき、株主・会社の利益のため忠実にその職務を行うこと
  • 競業避止義務・利益相反取引の制限:会社の利益を損なう可能性のある行為への制限
取締役の責任の種類
  • 民事上の責任:会社や第三者に対して損害賠償責任が生じるケース
  • 刑事上の責任:粉飾決算や証券取引法違反など、刑法・特別法に違反する場合
  • 行政上の責任:金融商品取引法違反などに伴う課徴金や業務改善命令

 

第2章:取締役会と意思決定のプロセス

取締役会の意義と法的枠組み
  • 取締役会を設置している企業の要件と設置会社における「業務執行機関」「意思決定機関」としての機能
  • 社外取締役や監査等委員会設置会社など、ガバナンス強化のための組織設計上のポイント
取締役会の実務運営
  • 議案の上程から決議までのフロー:事前準備、招集通知、議事録作成の手続き
  • 適切な議案審議のために必要な情報提供と「疑問を提示する義務」の重要性
  • リスク管理・内部統制への配慮:大きな投資決定やM&Aに関する社内手続きの整備
合議制とリーダーシップ
  • 代表取締役や議長が果たす役割と取締役会メンバー間での情報共有
  • 取締役同士の対立を建設的に扱う方法と、「少数意見の尊重」から生まれるガバナンスの活性化

 

第3章:取締役のリスクマネジメントとコンプライアンス

企業不祥事と取締役の責任
  • 会計不正、製品事故、コンプライアンス違反などが発生した場合、取締役会が負う管理責任と監督責任
  • 不祥事対応の初動やメディア対応、外部専門家の活用方法
内部統制システムの整備
  • 企業内における内部通報制度、文書管理、職務分掌、リスク管理委員会などの仕組み
  • 取締役会が内部統制システムの整備・運用状況をモニタリングする重要性
コンプライアンス経営
  • 公正取引、労務管理、知的財産の保護、環境対応など、ステークホルダーに対する責任範囲の拡大
  • ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応と持続的な企業価値向上という視点

 

第4章:社外取締役・監査役との関係構築

社外取締役の役割と活用
  • ガバナンス強化の観点から、社外取締役に期待される独立・客観的視点
  • 具体的な活用方法:執行部門に対する質問・提案、リスク評価への貢献など
監査役との連携
  • 取締役会の監督機能と監査役の監査機能の相互補完
  • 「監査役会」「監査等委員会」との情報共有の場や連携のための制度設計

 

第5章:取締役の個人防衛策と保険

取締役賠償責任保険(D&O保険)
  • 取締役が負う賠償リスクを補償するD&O保険の基本的な仕組みと加入のメリット
  • 保険金が支払われる条件や適用範囲の限界
役員報酬とのバランス
  • 責任リスクと報酬水準をどう考えるか
  • インセンティブ型報酬(ストックオプションなど)とリスクコントロールの兼ね合い
日頃のリスク回避策
  • 取締役会での発言や議事録への記載を通じて、適切な注意義務を履行したことを示す手立て
  • 業務執行部門との役割分担を明確にし、責任境界を曖昧にしないマネジメント

 

第6章:取締役としての行動指針と実践上の心得

実務における心構え
  • 「会社全体の利益を最優先する」姿勢と、派閥や個別の利益にとらわれない視点
  • 「知らなかった」では済まされない責任の重さへの自覚
多様なステークホルダーへの配慮
  • 株主・投資家だけでなく、従業員、取引先、地域社会などへ説明責任を果たす必要性
  • 企業価値向上と社会的責任(CSR・ESG)の両立を図る経営判断
今後のガバナンス強化と取締役像
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)やグローバル化の進展によるリスク要因の複雑化
  • 取締役として専門性・独立性を高めるための学習・情報収集の継続

 

本書の特徴・読みどころ

  • 最新の法改正やガイドラインを踏まえた解説
    会社法や金融商品取引法、コーポレートガバナンス・コードなど、新版として最新動向に合わせた情報を得ることができます。
  • 具体例や判例紹介が豊富
    取締役の責任が問われた事例やガバナンスの不備で大きな損失を招いたケースなどを通じて、実務への応用がしやすい内容になっています。
  • 取締役の実践的な行動指針が明確
    取締役会での議論の進め方、議事録への記載方法、リスク検討におけるチェックリストなど、すぐに役立つノウハウが示されています。
  • 社外取締役や監査役との協働
    近年の大企業を中心に進む社外取締役の活用や監査委員会設置会社の増加を背景に、社外の視点をどのように生かすかを具体的に提案しています。

 

こんな人におすすめ

  • 上場企業・非上場企業を問わず、取締役や経営陣の方
    すでに取締役として任命されている方だけでなく、取締役候補、社外取締役として参画している方にも役立ちます。
  • 管理職から取締役へキャリアアップを目指す方
    取締役になると負う責任や求められる視点が管理職とは異なるため、そのギャップを理解するのに有用です。
  • ガバナンス強化やコンプライアンス体制づくりを担う部署(法務部・総務部など)の方
    取締役の責任範囲や内部統制との関連を理解し、企業内のコンプライアンス施策や取締役会運営ルールを策定する際の参考にできます。

 

まとめ

『〔新版〕取締役の心得(柳楽 仁史)』は、日本の会社法やコーポレートガバナンスを背景とする「取締役の責任・役割」に焦点を当て、企業不祥事を回避しつつ持続的な成長を目指すための実務アドバイスを幅広く解説している一冊です。

取締役が果たすべき注意義務と忠実義務、リスクマネジメントの実践、取締役会の効果的な運営などに関する最新情報が盛り込まれており、次のような点で大いに参考になります。

  • 取締役がとるべき具体的行動や判断基準
  • ガバナンス強化の全体像と、社外取締役・監査機関との連携
  • 万一のトラブル時に備える責任回避策・D&O保険などの実務的知識

法令遵守や社会的要請が厳しくなる今後の企業経営において、取締役が自らの責任を正しく理解し、会社の持続的成長に貢献するための「実践的な指針」を得られる内容となっています。

会社の規模や業種にかかわらず、取締役や経営層、関連部署の担当者が読んでおくことで、組織全体のコーポレートガバナンスを高める参考になるでしょう。

 

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