【要約】イシューからはじめよ[改訂版]|安宅 和人

企画・思考術

『イシューからはじめよ[改訂版]』は、問題解決や仕事の成果が出ない原因を「能力」や「努力量」ではなく、解くべき問い(イシュー)の選び方にあると喝破する一冊です。

本書では、イシューを「重要で、なおかつ未決着な争点」と定義し、価値の低い問いに時間を使う“犬の道”から抜け出す思考法を示します。

仮説を立て、イシューを分解し、結論までのストーリーを描いたうえで、必要最小限の分析と、伝わるメッセージへ落とし込む——その一連の流れを通じて、遠回りせず成果にたどり着くための考え方を学べます。

頑張っているのに結果が出ない、考える仕事で迷いが多いと感じている人にとって、仕事の進め方そのものを見直すきっかけになる実践的な思考の指南書です。

目次

この本を一言でいうと・・・

仕事や問題解決の成果は、努力量ではなく「何を解くか(イシュー)」の選び方で大きく決まる。

本書は、重要で未決着な問いを見極め、仮説とストーリーを立てて最短距離で結論にたどり着く思考法を示している。

無駄な分析や作業を減らし、少ない力で最大の成果を出すための土台を作ってくれる一冊である。

『イシューからはじめよ』は、ただ忙しく手を動かしたり、努力量を増やしたりすることで成果を出そうとする働き方から一歩離れ、本当に向き合うべき問いは何かを見極めるための思考の軸を与えてくれる一冊です。

解く価値のあるイシューに集中することで、無駄な作業や遠回りを減らし、限られた時間とエネルギーを成果につながる仕事に使えるようになる考え方を教えてくれます。

本書の特徴

成果は「解き方」ではなく「何を解くか」で決まると定義している

『イシューからはじめよ』の最大の特徴は、問題解決を「どう解くか」以前に、「何を解くべきか」を見極める行為こそが最重要だと明確に打ち出している点です。

多くのビジネス書が分析手法やフレームワークを紹介する中で、本書はその前段階に立ち返り、「その問いは本当に解く価値があるのか?」と問い直します。

努力や作業量を増やすほど成果が遠のく状況を避けるための、根本的な視点を与えてくれる一冊です。

「イシュー」という言葉を実務レベルで定義している

本書ではイシューを、単なる課題やテーマではなく、重要で、なおかつ未決着な争点として定義しています。

この定義があることで、「今やっている仕事はイシューなのか、それとも作業なのか」を冷静に切り分けられるようになります。

曖昧になりがちな“重要そうな仕事”を言語化し、取捨選択できるようになる点が大きな特徴です。

「犬の道」という強烈な比喩で遠回りを可視化している

本書で象徴的なのが「犬の道」という概念です。

一見まじめに頑張っているのに、問いがズレているために成果につながらない状態を、図と比喩で直感的に説明しています。

「なぜこんなに忙しいのに結果が出ないのか」という感覚に、言葉と構造を与えてくれるため、読後に自分の仕事を客観視しやすくなります。

仮説とストーリーを先に作る「逆算型」の問題解決

本書では、データを集めてから考えるのではなく、仮説と結論までのストーリーを先に描くことを重視します。

イシューを分解し、それぞれに仮説を置き、どの順番で検証すれば結論に至るかを設計する。

この「道筋を作ってから動く」姿勢が、分析の迷走や無駄な作業を減らします。

「So what?」で結論の解像度を徹底的に高める

本書では「So what?(それで何が言えるのか)」という問いを何度も当てることで、結論を磨き上げていきます。

事実や分析結果を並べるだけで終わらせず、「それが意思決定や行動にどうつながるのか」まで押し上げる思考法です。

報告書や企画書が“説明”で終わってしまう人にとって、特に効果を感じやすい特徴です。

分析よりも「アウトプット」を起点に考える設計思想

本書では、分析は目的ではなく手段だと明確に位置づけられています。

先に「最終的に何を伝えるのか」「どんな形で示すのか」を決め、そのために必要な分析だけを行う。

このアウトプットドリブンな考え方が、作業量を抑えながら成果を出す働き方につながります。

個人でも組織でも再現性が高い思考の型

コンサルティングの現場で培われた考え方でありながら、本書のフレームは個人の仕事や一人事業、編集・企画業務にも応用しやすい構成です。

特定の業界や役職に依存せず、「考える仕事」に共通する本質を扱っているため、長く使える一冊になっています。

読み返すほど効いてくる“思考の道具箱”的な一冊

一度読んで終わる本ではなく、

  • 仕事が詰まったとき
  • 方針に迷ったとき
  • やることが多すぎると感じたとき

に立ち返ることで、思考を整理し直せる構造になっています。

実務の節目で何度も参照したくなる点も、本書ならではの特徴です。

 



 

こんな人におすすめ

忙しいのに、成果が出ている実感が持てない人

毎日やることに追われているのに、「何かを達成した感覚」が残らない。そんな状態が続いている人に、本書は強くおすすめできます。

『イシューからはじめよ』は、努力量を増やすのではなく、成果に直結しない仕事を減らす視点を与えてくれます。

「今やっていることは、本当に解く価値があるのか?」と立ち止まれるようになるだけで、仕事の密度は大きく変わります。

調査や分析で手が止まりがちな人

資料を集め、データを調べ、まとめているうちに、「結局、何が言いたいのかわからなくなった」という経験がある人にも向いています。

本書は、仮説と結論への道筋を先に作る思考法を示しているため、調べすぎ・考えすぎによる迷走を防ぎやすくなります。

企画やアイデアの質を高めたい人

企画を考えても、「それで何が変わるの?」と返されてしまう。

そんな壁にぶつかっている人にも、本書は役立ちます。

「So what?」を繰り返すことで、アイデアを示唆や意思決定につながる形まで磨き上げる視点が身につきます。

ひとりで仕事や事業を進めている人

個人事業主、フリーランス、ひとりでメディアやサービスを運営している人は、すべての判断を自分で下す必要があります。

本書は、優先順位を決めるための“思考の軸”を与えてくれるため、時間と体力を無駄に消耗しにくくなります。

仕事を「作業」から「価値」に変えたい人

言われたことを正確にこなすだけでなく、「この仕事は何のためにあるのか」を考えながら働きたい人にもおすすめです。

本書は、作業を積み上げる働き方から、価値を生み出す働き方へ視点を切り替えるきっかけになります。

思考力を一段引き上げたいビジネスパーソン

若手から中堅、リーダー層まで、「次のレベルの考え方」を身につけたい人にとって、本書は基礎体力を鍛える一冊です。流行のフレームワークではなく、長く使える思考の土台を作りたい人に向いています。

 



 

どう読むと役に立つか(読み方のコツ)

最初から全部理解しようとしない

『イシューからはじめよ』は、通読して知識を覚えるタイプの本ではありません。

一度で完全に理解しようとすると、かえって抽象的に感じてしまうことがあります。

まずは「こんな考え方があるのか」と全体像を掴むつもりで読み進めるのが、結果的にいちばん役に立ちます。

1章(イシュー・ドリブン)を最優先で読む

時間が限られている場合は、1章だけでも先に読むことをおすすめします。

この章で示される「イシューとは何か」「解く価値のある問いとは何か」を理解するだけで、日々の仕事の見え方が変わります。

他の章は、この1章の考え方を具体化するための補助輪と考えると読みやすくなります。

自分の仕事を一つ当てはめながら読む

抽象的な説明が多いため、「今、自分が抱えている仕事や悩み」を一つ決めて読み進めると理解が深まります。

「この仕事のイシューは何だろう?」「そもそも解くべき問いはズレていないか?」と置き換えながら読むことで、内容が一気に実務レベルに落ちてきます。

2章は“分解の見本”として読む

2章では、イシューを分解し、仮説とストーリーを組み立てる方法が示されます。

ここは細部を暗記するよりも、「どういう順番で考えを整理しているか」 に注目して読むのがおすすめです。

思考の流れをなぞる意識を持つと、他のテーマにも応用しやすくなります。

4章・5章は必要になったときに戻る

アウトプットやメッセージに関する章は、「報告書を書く」「企画をまとめる」といった場面で再読すると効果的です。

最初の読書では流し読みでも問題ありません。

実務でつまずいたタイミングで読み返すことで、理解が一段深まります。

印象に残った一文をメモしておく

すべてを実践しようとせず、「これは効きそうだ」と感じた一文や考え方を一つだけ拾ってメモしておくのがおすすめです。後日そのメモを見返すことで、思考の軸として自然に定着していきます。

一度読んで終わらせず、節目で読み返す

仕事が行き詰まったとき、やることが増えすぎたとき、方向性に迷ったとき。

そんな節目で読み返すと、その都度違う部分が刺さります。

『イシューからはじめよ』は、読む時期によって役立つ箇所が変わる本です。

 



 

「読む前に知っておきたい注意点

即効性のある「作業マニュアル」ではない

『イシューからはじめよ』は、チェックリスト通りに進めれば成果が出るタイプの本ではありません。

具体的な手順やテンプレートをそのまま使いたい人にとっては、やや抽象的に感じる可能性があります。

この本は、考え方の前提そのものを組み替えるための一冊だと理解しておくと、読み進めやすくなります。

読んだだけでは仕事は変わらない

本書の内容は、頭で理解しただけでは効果が出にくい構造になっています。

実際の仕事や悩みに当てはめ、「この仕事のイシューは何か?」と考えて初めて意味を持ちます。

読書体験というより、思考のトレーニングに近い本である点は、あらかじめ知っておきたいところです。

抽象度が高く、最初はわかりにくいと感じやすい

具体例はあるものの、全体としては抽象度が高めです。

特に、仕事の経験が浅い場合や、実務の文脈がまだ少ない場合は、「言っていることはわかるが、使いどころが見えない」と感じることがあります。

その場合は無理に理解しようとせず、時間をおいて読み返すのがおすすめです。

「頑張る姿勢」を肯定してくれる本ではない

本書は、努力や根性そのものを評価しません。むしろ、「その頑張りは本当に意味があるのか?」と問い直してきます。

努力量を評価されたい人や、忙しさそのものに価値を感じている人には、少し厳しく感じられる内容かもしれません。

上司や組織の影響で、すぐに実践できない場合もある

イシューを選び直すには、ある程度の裁量が必要です。

すでに問いや進め方が固定されている組織では、本書の考え方をそのまま実行できないケースもあります。

ただし、その場合でも「考え方の軸」として持っておく価値はあります。

一度読んで「合わない」と感じても判断が早すぎる

初読ではピンとこなくても、仕事のフェーズが変わったときに突然効き始めることがあります。評価を一度で決めず、必要になったときに再読する前提の本だと捉えるのがおすすめです。

 



 

まとめ

『イシューからはじめよ[改訂版]』は、仕事や問題解決において「もっと頑張る」ことを求める本ではありません。

その代わりに、本当に向き合うべき問いは何か、解く価値のある論点はどこにあるのかを見極める視点を与えてくれます。

やるべきことが多く、忙しさに追われているときほど、問いの質は下がりがちです。

本書は、仮説を立て、イシューを分解し、結論までの道筋を描くことで、無駄な作業や遠回りを減らし、成果につながる思考へと立て直してくれます。

一度読んで終わる本ではなく、仕事に迷ったときや方向性を見失ったときに立ち返ることで、何度でも効いてくる一冊です。

「このままの頑張り方でいいのか」と少しでも感じたことがあるなら、本書はその違和感に答えてくれるはずです。

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編集後記

仕事がうまくいかないとき、私たちはつい「もっと頑張れば何とかなる」と考えてしまいます。
調べる量を増やす、資料を厚くする、作業時間を伸ばす——。けれど、その頑張りが報われない瞬間があるのも事実で、むしろ頑張るほど遠回りになっている感覚に、心当たりがある人も多いのではないでしょうか。

『イシューからはじめよ』の痛快さは、その原因を努力不足ではなく、問いのズレとして言語化してくれるところにあります。
解くべき問い(イシュー)を外したまま走り続けると、どれだけ誠実にやっても「犬の道」に入ってしまう。ここをはっきり指摘されると少し刺さりますが、同時に救われます。努力の方向を直せば、結果の出方は変わるからです。

この記事を書きながら改めて思ったのは、イシュー設定は「頭の良さ」ではなく、立ち止まる習慣なのだということでした。
「この結論が出たら、何が変わる?」
「意思決定者は何を知りたい?」
この問いを一度挟むだけで、やるべきことが絞られ、迷いが減り、時間の使い方が整っていきます。

そして、この本が本当に効いてくるのは、仕事が忙しいときほどです。忙しいと、問いの質は下がりやすい。だからこそ、本書は「もっと走れ」と言うのではなく、「走る前に地図を描け」と促します。仮説→分解→ストーリーという順番は、決して格好つけた思考術ではなく、限られた時間で成果を出すための現実的な防衛策なのだと思います。

読み終えたあとに、何か特別なスキルが身についた気がするわけではありません。
ただ、次に迷ったときに「まずイシューは何だろう」と立ち返れるようになる。
その静かな変化が、積み重なることで働き方そのものを変えていく——この本はそういうタイプの一冊です。

もし今、「頑張っているのに成果が出ない」と感じているなら、足りないのは努力ではなく、問いを整える時間かもしれません。この記事が、その立ち止まりのきっかけになれば嬉しいです。

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